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バスは何人もの見知らぬ客を乗せ、なんてことなしに固いコンクリートの上を駆け抜ける。
乗客は皆思い思いの場所で降車ボタンを押し降りていく。
まるで乗せてもらってるのが当たり前のような顔をして……
いや客なんだから当たり前だろと思うかもしれない。
俺だって似たような考えだからだ。
終点近くなるとバスの中は俺一人か乗っていてももう一人いるかいないかである。
この日は俺一人だった。だが乗客が何人いようと俺には大して影響はない。
いつも小説であれ考え事であれ自分の世界に入り込んでいるからだ。
「お客さん、どこで降りるの」
運転手の一言で一瞬にして現実世界に引き戻された。
「えと……終点までですけど」
特に他に伝えることもないので聞かれたことにだけ応える俺……
もう少し社交的だったらと自分でも思う。
「でもお客さん終点だと遠くないかい」
まさか会話が続くとは思っていなかったがとりあえず応える。
「はい。できれば少し前で降ろしていただけると嬉しいですけど」
もうこの際だから言ってしまえと多少緊張しながらも伝えてみる。
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