【土佐藩 岡田以蔵】

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…… まだ、夜も明けきらない薄暗い部屋で。 意識の片隅が微かに捕らえた、耳慣れた音。 …――ビュッ! …――ビュッ! ……この音は。 布団の中で、ゆっくりと目を開ける。 ビュッ!と、また同じ音。 それと同時に、履き物が土の上を滑る固い音も聞こえてくる。 音源は、庭だ。 まだ8割り方寝たままの身体を無理矢理起こし、俺は身支度を始めた。 音の主は分かっている。 眠りを邪魔された事より、先を越されたことのほうが悔しかった。 着替えを終え、部屋の隅に立て掛けてある竹刀を乱暴に掴む。 朝と呼ぶには早すぎる庭へ、俺は歩き出した。
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