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「…よしっ、もう1回!」
私は竹刀を握り直し、中段に構える。
次こそ、成功させてやるんだから!
「やー!!」
勢いよく踏み込んだ、その時。
「威勢が良いのは結構だが、もう少し静かにしてくれないか」
!?
不意に聞こえた声に、身体が強張ってつんのめってしまう。
ばっと振り向くと、そこに。
「龍馬たちが起きてきたら、面倒なことになる」
「いっ…以蔵!どうして…!?」
驚く私の前で、以蔵はひとつ、大きな欠伸をしてのける。
「素振りの音で、目が覚めた」
「素振りの…?そんなにうるさかった?」
やばっ!
練習に必死で、全然気にしてなかった。
「ご、ごめん…起こしちゃって」
「いや」
ふと、以蔵が真面目な顔でこっちを見る。
「師範を引き受けたのは俺の方だ。稽古に付き合うのは当然だろう。…それにしても、早すぎるとは思うが」
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