霧島冷夏

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霧島冷夏(きりしまれいか)は、昔から続く悪夢にうなされていた。 そう繰り返し見る夢。 その中では自分は違う自分になっていた。 セーンティリーそれが夢の中での自分。 見知らぬ異界の地をさまよう私。 それは日本の田園風景。 遠くに見える合掌造りの家々。 私は日本人。 もちろんこの風景を知っている筈だった。 だが夢の中の私はその事を全く忘れている。 セーンティリーにとって、それは異国と言うより異界だった。 自分の中で鳴り響く、警告音。 自分はどうしてここにいるのか。 記憶が錯乱し、色々な人の記憶が入り乱れたような感覚に襲われる。 ここはだめ! 慌ててその場から逃げようとする。 誰かに見られている。 ふっと足下に落ちた、手鏡に気付く。 見ちゃダメ!! その意思とは裏腹に鏡を覗き込むセーンティリー。 そこには自分でない誰かが写っていた。
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