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金鵄(きんし)の銘柄が印刷された包み紙をくしゃくしゃに丸めた羽山川柳(はやませんりゅう)は、一本だけ残ったタバコに火をつけた。
ふっと懐中時計に目をやると、一時間の時差を無視して時間を刻み続ける時計は、午前を回りつつある。
日差しは容赦なく、深い陰影を刻んだ川柳の横顔を浮き彫りにする。
湿った空気が日本の風土を思い出させた。
自分にも導郷の念があったかと思いいたる。
そんな感慨を打ち消すように唐突に日差しが遮られた。
自分と同じ辛酸を舐めた者の陰惨な影があった。
痩身短躯の男がたたずんでいる。
日本人が忘れて来た空気がその男には漂っていた。
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