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「帰ったぞー」
教会の扉を足蹴りで開く。
少女を抱えていたので仕方ない。
「・・・はぁ・・・。ウェルズ。
扉は手で開けろと何度言えば解るんだ」
察しの通り、
ボクは物わかりの悪いヴァンパイアなんだ。
頭を抱えて溜め息を吐いているのは狼族の神父。
なんだかんだ言って彼には頭が上がらない。
「ア~ニキー!
速かったッスね~!」
と巡礼者用の椅子に待ってましたとばかりに立ち上がる黒髪のヴァンパイア。
ボクをアニキと慕うが彼の方が歳上の筈である。
「しかも可愛い子ちゃんまで連れて来ちゃって~」
ボクの抱き抱える少女を凝視して、
既に顔がでれでれだ。
と、神父の顔がキリッとしたかと思うと、
「おお、これは麗しき少女よ、
お初目にかかります、
ヴェルフェゴールという者です。
以後お見知り置きを・・・」
と言って仰々しくお辞儀をしたあと、
彼女の手を取って軽くその掌にキスをした。
ボクの眼下で赤くなる少女。
それほどまでにこの『ヴェルフェゴール』の渾名を持つ狼神父はかっこよいのだ。
・・・少しむっとした。
「・・・アニキ~、
顔が怖いッスよ~」
「そんなことはない」
少し怯えた表情を浮かべる黒髪――リードに即答しつつ、
内心少し焦った。
表面に出るようなタイプでは無いと思っていたからだ。
「ふっふ。若いねぇ、ウェルズ君」
・・・五月蝿い。
とにかく、どういうことか説明してもらわなければ。
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