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この治安の行き届いたご時世の中、人身売買で大金を得た人物――カプサという名の男がいる。
彼は今日も深夜、ある『特別な友達』に人を売るつもりである。
特に、若い女は闇市で貴族どもに売るよりも高く、護衛などの雇い金を差し引いても有り余る大金で買ってくれる。
今回も若い女である。
しかも、兼ねてから『友達』は狙っていたらしいが、手が出せなかったという代物である。
『いつもの何倍と金を払おう。
護衛も私がつける』
その高条件に従い、
私は時間をかけ、
『獲物』を捕獲し、
慎重に慎重を期し、
狼や他の『友達』から逃れ、
やっとここまで来たのである。
あと少しで、自分も夢、
――上流階級の貴族よりも上に立てる。
その筈だった。
『やぁお兄さん。今日は月が綺麗だね』
紅い髪の悪魔に出会うまでは。
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