ACT1 プロローグ

3/6
前へ
/25ページ
次へ
この治安の行き届いたご時世の中、人身売買で大金を得た人物――カプサという名の男がいる。 彼は今日も深夜、ある『特別な友達』に人を売るつもりである。 特に、若い女は闇市で貴族どもに売るよりも高く、護衛などの雇い金を差し引いても有り余る大金で買ってくれる。 今回も若い女である。 しかも、兼ねてから『友達』は狙っていたらしいが、手が出せなかったという代物である。 『いつもの何倍と金を払おう。 護衛も私がつける』 その高条件に従い、 私は時間をかけ、 『獲物』を捕獲し、 慎重に慎重を期し、 狼や他の『友達』から逃れ、 やっとここまで来たのである。 あと少しで、自分も夢、 ――上流階級の貴族よりも上に立てる。 その筈だった。 『やぁお兄さん。今日は月が綺麗だね』 紅い髪の悪魔に出会うまでは。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加