3人が本棚に入れています
本棚に追加
深緑の瞳。
燃えるような鮮血の紅髪。
「こんな時間にどうしたんです?
お仕事ですか?」
それは此方の台詞だ・・・。
言葉を飲み込み、彼は街灯に座る少年を睨む。
「・・・なかなか旨そうだけど、
こっちも仕事でね。
向こうの人達は可哀想だったけど、お兄さんは助けてやるから荷物を置いてさっさと立ち去れ」
呑気な、丁寧な口調から一変、
威圧するような口調に。
深淵のような深緑の瞳は、
射ぬくような視線とも違う。
氷のように冷たいものでもない。
ただ威圧的な力を持って、
自分をへいげいしている。
こ、こんな餓鬼に・・・。
「貴様、何者だ・・・」
「ん?通りすがりの正義の味方」
さも愉快そうに笑う。
だがお陰で、威圧が緩み、
冷静さを取り戻せた。
向こうの人達は可哀想だった。
つまり友達の用意した護衛は・・・。
それならば、自分に出来ることは生きることだ・・・。
そこまで判断して、
彼は唯一の荷物を残したまま、
一目散に裏路地へと駆けていった。
・・・己の不幸を呪いながら。
最初のコメントを投稿しよう!