0.過去(2)

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 次の瞬間、マリアの見つめる前で伯父は前触れもなく頭を吹き飛ばされた。その衝撃で冗談のような空中2回転半捻りを決めると、伯父は死んだ。 「え」  パコーンと、一寸遅れて空の上から狙撃音が聞こえる。不恰好に着地した伯父の死体は、顎から上がなくなっていた。  意味が分からない。マリアはそう思ったがどうやらそれは車に居たあの男も同意見だったようで、伯父のものだった車は大慌てで逃げ出していく。直後、伯父の車は盛大に火花を散らして蜂の巣になった。  次いでガトリング砲特有の獣の咆哮に似た砲声が響きわたる。音が轟いたのは僅かに数秒だったが、車は既に原型を留めてもいないような気がする。中の人は知らない。  音はやはり上から。 「ぷ……クスス」  あまりに超展開をするものだから、マリアは思わず吹き出した。  マリアは空を見上げる。 「あぁ……」  回る、2軸の羽根車。さっき見つけたあのヘリコプターもどきが、風をかき回しながら、降りてくる。マリアの許へ。 「君には復讐を行う権利がある。その権利を行使する気はないか」 「したいです」  躊躇はない。マリアにとっては明らかにそれが正義だったから。
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