3.『獏』という正体

4/5
前へ
/26ページ
次へ
「知らない知らない知らない知らない……」  頭を抱え込んでレベッカはぶつぶつと呟いたが、ふと気配を感じて振り返る。部屋の中には2ハンドがいた。 「お帰り」 「居たの」  少し間を置き、2ハンドが言う。 「俺の中に『鵺』が居る」  レベッカは茫然とする。 「ナノマシンを介した……特殊非現実……イメージ、共有」  逃げ切れなかった。 「どうして俺がこんなに強くなったのかわかったよ。マリアが教えてくれた。『鵺』は自分が強くなるために戦闘のデータをナマモノとして残したんだ。戦闘エリアの中の意識や恐怖やイメージといった生々しいデータを、殺さずに生かしておいた俺の中に」 「まるで、メモリースティックだわ……」  終わった。 「そうだな。結果的に俺は『鵺』にとって強くなりすぎて、2ハンドになった俺がマリアを殺した。だから今この頭の中にはマリアの残子も遺っていて、死んだ傭兵連中すらもいて。あんまりカオスなもんで、容量一杯でわけわかんなくなっちゃってさ」 「そう、そうか……貴方もあのマリアという子と同じ、否応なしの境遇からはい上がってきた人間だから……、あの子が一つささやけば、貴方があの子の側につくのはあたりまえだ」  終った。 「…………」  なら、これで、もう。 「いいよ、もう殺してよ。逃げ切れる資格なんて、あると思っていなかったよ……。でも自分で死ぬなんて、怖くて、イヤ」
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加