3.『獏』という正体

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3.『獏』という正体

レベッカというついでの子についても。ついでに。  現在。マリアが死んだころ。  とある地下施設。  重厚な扉へ同僚が爆薬を仕掛ける。この中だ。ようやくジョンストン ノートンを追い詰めた。この『鵺』騒動はちょっとハチャメチャすぎた。さっさと終わらせて帰ろう。レベッカはメガネのポジショニングをきりりと正す。  ここまで来るにはひどく長かった気がした。それはそうだ。いったいいくつの戦闘(ショー)が台無しになり、貴重なパイロットたちが何十人死んだことか。レベッカ自身も泥に塗れての調査なんてとんでもなく労力を使う仕事もさせられたし、報告書の枚数も天に届くほどだ。出資者のおじいちゃんたちに出た損害も計り知れない。まぁ、損害を受けたはずの本人達は高難度な暇つぶしの出現に拍手喝采で楽しんでいたのだが。  あと、そうだ。2ハンドとかいうだっさいコードネームを付けられた傭兵が言いよってきたり。仕事として必要な情報を渡してあげていただけだというのに、何を勘違いしたのやら。まったく。そんな2ハンドなんかとどうしてあれがそうしてどうのこうのなってしまったのかと言えば、ちょっと突き放してみた時の彼がひどく悲しそうでか弱そうでうんぬんごにょごにょあれがどうのなせいであって……。 「もしかして普通に女の子と関わったこともないんじゃないの……」 「なんかいったか?」  同僚から声がかかる。続けて、準備が整ったとも。 「う、うん。行きましょ」  レベッカは銃を構えた。  扉の錠が爆破され、ゆらりと開く。内側からの反応はない。ぞろぞろ中に入ってみればそこは何だかとってもおぞましいマッドサイエンティストの居城と言ったふうで、至る所に理解不能な造形の演算機械たちが蠢いている。  その最奥に、2人の人間が座っていた。ジョンストン ノートンと、もうひとつは新鮮な少女の死体。どっちかというとノートンの方が死にそうな顔をしている。 「こんにちは。ずいぶんと調子が悪そうですね、Mr.ノートン」 「ごきげんよう。熱心に追ってくれたようだね。レベッカ君とかいったかな、心遣い感謝するよ。どうも新しいナノマシンの適合具合がね」  ノートンは首を揉みながら笑う。金持ち特有のそういう障害もあるんだろうか。まぁ、どうでもいい。
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