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2.妖怪退治
2ハンドというパイロットについて。
現在に戻る。
「『鵺』を倒せ。2ハンド」
それがあの化け物に付けられた通称で、彼にあたえられた指令で、彼にあたえられたコードネームだった。
「方法は」
断る権利など皆無といった風なので、単刀直入に聞いた。出資者のじーさんたちは満足気な様子で続ける。
「カリカリにチューンアップした最新HAをおまえ専用仕様の機体に仕立ててやろう。そして情報は全てノートンのアホにリークしてやろう。奴は嬉々として乗ってくるぞ。素晴らしい作戦だ。やってくれるな、2ハンド。正面から『鵺』を迎え撃て。殴り飛ばし、夢想の中の妖怪をかき消してしまえ」
「はは……感動した」
これまで何回かあの化け物、通称『鵺』への遭遇戦があって、彼はそのなかで何故だか決まって生き残ってきた。最初に生き残ったのは運か何かだったか知れないが、戦闘を経るごとに彼は並ぶ者の無い強さを発揮するようになった。まるで無尽蔵に能力を開花させていった彼は、そんなわけで出資者たちより対『鵺』戦闘用特別専用機チャンヴェールを与えられ、諸悪の根源であるジョンストン ノートンとかいう男の指揮する『鵺』を倒すべく、2ハンドとなった。
2099.03.16。
13:00。
(デ)遺跡地区戦闘用区域。
HA投入数合計:3。
内訳
無人機×2。
チャンヴェール×1。
作戦開始。
大昔に栄えていたという巨大廃墟群のなかで、3機のHAが展開していた。既に『鵺』との戦いの火蓋は切って落とされているらしい。『鵺』は自ら火に飛び込んでくるようなイカレた敵だというので、2ハンドは今は新しい機体、チャンヴェールのなかでサボっているだけだ。
視界にノイズ。雨だ。
「作物が伸びるな」
空が変に明るい。雨が止んだ。プラズマが破ぜた。
「あれ……」
全ての機器に一時の乱れが生じ、やがてエリアは強力なノイズに支配される。特に指令所との通信はダメだ。レーダーも、この狭い戦闘区画より外の範囲は完全に不可視となってしまった。このゴーストタウンにきっちり隔離されたというわけだ。妖怪の出るスポットで孤立無援とはあまりに愉快である。
ただ、この一連が事前にレベッカの教えてくれた兆候通りの流れであるというのがせめてもの救いだ。
「ホントにくるのか、『鵺』」
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