Nothing, but only

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 後を見る気は全く起きなかった。  何故、自分は今日に限ってこんなにも手間取る靴を履いてきたのかと呪いながらロングの編みブーツの紐をきゅっと絞った。   「帰るのか?」  真後ろに慣れた気配が立っているのは分かったが、振り返ることはしない。  左の紐も絞って、脇に置いた鞄を肩に掛けながら立ち上がる。 「ええ。もう、疲れたから」
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