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「よく口が回ることで……。まぁ良いでしょう。今宵のことはどのように対処なさるのですか?」
「そうですね。強盗未遂事件ということに致します。大道芸中に眠り薬の香を焚き、観客を眠らせて財布を抜き取ろうとしたが、我らが踏み込み、退散した……そのような筋書きに致しますので、皆さん、周知徹底の程、宜しくお願い致します」
サスケの言葉に近くに来ていたミヤビ、ハルキとヨシノブも頷いた。
「サスケさん、追跡は既に?」
エイタの質問にサスケは軽く頷いてから、壱番隊の者に目配せをする。それを合図にハルキとヨシノブを連れて小屋から出ていった。
「さて。お片付けをしてから一旦道場へ行きましょう。詳しいお話はそこで」
サスケは腰に差してあった大振りの刀を抜き、独特な呼吸をしながら、まばたきを二、三度するくらいゆっくりと縦に宙を切る。
次は横。斜め、また縦と横と五回繰り返したあと、『ダンッ!!』という何かが断ち切られる音とともに客席を覆っていた蚕が綺麗に消えていった。
「ほぅ、『不知火式剣技:断ち風』か?文献で見たことはあるが、まだ技の継承が残っているんだな」
「ミヤビ、よく知っているね。既に継承が途絶えているとされている対抗技なのに」
「クウカイ様は己が目で確かめないとお信じにならない方だからな。遥か昔の技でも、宝に対抗できる手段であれば『知っておきなさい』で何でも詰め込まれたんだ」
刀を鞘に収めたサスケは二人の方を向き、ニコリと笑う。
「この剣技は作法や動作が多くて実戦には不向きですが、このような後片付けには特別な力も必要がないので便利なんですよ。さて」
サスケは残りの壱番隊の者たちに何かしらの指示をした後、目覚め始めた観客の目を避けるように二人を連れて早々に立ち去った。
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