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『グォォオオオオオ!!』
突如森に響く雄叫び。
姿勢を変えずにそれが聞こえた方を向くとそこには
「グルルルルルル・・・」
まさしく目と鼻の先に巨大な狼の顔が
「おいおいハウンド。それは恋人の距離だぜ?」
(ふっ・・・決まったな)
なんて思ってる俺にはお構いなしに喰い付いてきた。
『ブラスト』
その牙が体に触れる刹那、ハウンドの口を中心に起こった爆風が俺の体を隣の木の枝にまで吹き飛ばした。
「よっと」
その枝を片手で掴んで無駄にぐるっと一回転してからそこに座る。
そして足を組み、頬杖をついて俺はそいつに言った。
「はっはっはっ。そう焦んなよ。待てない男はモテないぜ?」
その言葉にハウンドは微塵も反応せずこちらを睨み、低く唸り続けているだけ。
(ま、言葉なんて通じないか)
ハウンド相手に求めるのは間違ってるというのは分かっているものの、こういうもんはノってくれないとなんとも面白くない。
思わず軽くため息が出た。
「さてさて、ハウンド。
残念なお知らせだ」
狼の足元に緑の魔法陣が現れ、光を増してゆく。
「俺は待てない男なんだ」
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