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こうして、レジスタンスは壊滅した。
決闘法に基づき、
今後一切の政府打倒組織の結成、
活動が禁止された。
もし行えば、賛同者は全員死刑だ。
景紫はこれと全く同じ方法で政府を倒そうとしていた。
もし見つかれば全員が死刑だ。
二番煎じが通用するとは思えない。
それが俺が懸念する理由だった。
「なぁ景紫…」
「なんだ?」
「俺が総理大臣になって法律を変えるのはダメか?」
「ダメじゃないが、ここまで決闘法が浸透してては辛いだろうな。
しかも総理大臣には尾善がなるだろ」
「尾善か…」
桐原尾善。
桐原泉水の息子で、現在弱冠二十二歳で副総理大臣を務めている天才。
俺や景紫、流音と同い年で幼なじみだ。
二十二歳の若さで政府高官になれたのには事情がある。
レジスタンス壊滅から三年後、ある法律ができた。
「飛級法(とびきゅうのほう)」である。
アメリカなどではよくあるが、
飛び級制度を日本も取り入れたのだった。
飛び越すから「桂馬法」などともよばれている。
当時大学一年だった俺と尾善はこの法律の制定後、
初めて、飛び級を用いて大学を卒業した。
そして、そのまま選挙に出馬。
親の名前も影響し、当選。
七光りなどと呼ぶ者も居たが、
確かにそれを利用した面もあり、否定はできなかった。
その後互いに二年の内に、
俺は決闘法の制定によって新しく創設された役職である、行政執行部長。
尾善は文部科学大臣になった。
それからさらに一年後、尾善は副総理大臣にまで上りつめていた。
そして、現在に至る。
「わかった少し考えさせてくれ」
一年前、俺はそうして景紫の野望を知った。
さて、
忘れそうになっていたが、今は「こしあん、つぶあん論争」の真っ最中なのだ。
テレビ画面の向こうでは、じゃんけんに使うカードを互いにセットし終えていた。
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