~決闘~

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決闘法におけるじゃんけんは、 まずお互いが出す手を決めたら、 ぐー、 ちょき、 ぱー、 が書かれたカードを装置にセットする。 互いにセットし終えたら、 「ジャンケンポン」 の声に合わせてカードが反転する。 簡単ではあるがこれだけだ。 つまり今まさに決着がつこうとしているのである。 テレビから声が聞こえてくる。 「さぁ、それではいきます。じゃん、けん…」 ゆっくりとカードが反転する。 当人からしたら永遠のように感じるだろう。 それなのにこの事態の異常さには気付きはしない。 結局は仕方ないと諦める。 やはり狂ってる。 「ぽん」 こしあん派はぐー。 つぶあん派はちょき。 この瞬間つぶあんが消滅するのが決定した。 こんなにも簡単に。 やれやれだ。 「さてと…」 席を立ち、会見場に向かう。 ここからが俺の仕事だ。 会見場に向かう途中、 携帯電話のバイブレーションが震える。 画面には「K」の文字。 「K」とは工藤景紫のコードネームだ。 そこにはこう書かれている。 「確か、今の総理の好きなのこしあんだよな」 苦笑いがこぼれた。 そう、これはデキレースなのだ。 これだけじゃない。 今まで起きた論争には少なからず政府の意志が絡んでいる。 当然民間人は知らないが、 政府高官の者何人かには、 この事実を知っている者もいる。 「その通りだよ」 と返して電源を切った。 さすがに会見場で携帯電話がなれば問題になる。 会見場の直前で、ミハエル・ハバノフスキーとサモン・ギーアンが握手を交わしていた。 もう片方の手には茶色の紙包みが握られている。 なるほど、それが今回の報酬という訳か。 まぁ確かに外国人には大した問題ではないか。 顔にも笑顔が浮かんでいる。 一仕事終えた後のような爽やかな顔だ。 責任を感じるなんて様子はどこにも無い。 国民にこんな姿を見せたいものだ。 はたしてどれ程の人が血の涙を流して怒るだろうか。
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