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父の姿を見つけ、バイクをその場でターンさせた瞬間だった。
「あらあら、ターゲットが向こうから来てくれるなんて」
紅い機体のコックピットでパイロットの少女は薄く笑みを浮かべると、操縦桿の先端に付いたボール―トラックボールマウスのボールの様な物―を回して武装を選択し、ボールを押し込んで決定する。
アルギスは急に動きだした紅い機体をミラー越しに見ていた。
槍投げの選手の様に頭部の横で構えられる右腕。
その右手の中に蒼い光が集まり何かの形を形成していく。
(冗談じゃねえぞ!)
紅い機体の構えた手に作り出された物、正確には転送されたものだが、それは剣だった。
旧世紀西洋で使用されたメディーバルと呼ばれた両刃剣。
それをそのまま巨大化したように見える剣だ。
その剣を紅い機体はあろう事かアルギスの乗るバイク目掛けて放り投げた。
それこそ槍投げの様に、だがゆっくりといかにも手加減していますと言うようなどうさで。
放物線を描き飛来するそれにアルギスの顔が青ざめた。
「おいマジかよ!」
あるいは彼がもう少し冷静であったなら、その剣がどこに落ちるかを予想し、対策を練れていたかも知れない。
紅い機体の投げた剣はアルギスのバイクの遥か後方に落下し、その両刃がアスファルトに食い込んだ。
ドゴンという爆発にも似た音と共に。
そして一瞬遅れてそれはやってきた。
爆風、そして砕けたアスファルトの破片。
「ちょ、ま! うあ!」
飛び散るアスファルトの破片、破片と言っても大きい物なら直径2mを優に超えている。
それがバイクスレスレの場所に落下し、慌ててハンドルをきって体勢を崩したアルギスをまるで爆風のような暴風が襲った。
結果としてあっけなく地面を転がるアルギス。
そんなアルギスの元に近くに止めてあった車の陰で瓦礫を凌いでいた父がアルギスの傍に駆け寄る。
「アルギス!!」
「っつ、いってえ~」
酷い外傷は一見して見当たらない。
アルギス自身もどこか打った程度のようだ。
バイクがスピードに乗る前だったのが幸いしたのか、単に安全装置のおかげか。
なんにせよ無事なようだ。
しかし安心は出来なかった、剣を投げた機体が、二人の傍まで迫っていたのだ。
歩くではなく、まるで地面を滑るようにして。
『お会い出来て光栄です。リカルド・アーヴィン、いえリカルド・T・ユンカース』
紅い機体から聞こえたのは父の名と、少女の声だった。
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