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リカルド・T・ユンカース、アルギスの知らない名だった。
何を言っているのかと疑問に思ったが、アルギスの思考は寸断された。
紅いAFの外部に取り付けられているであろうスピーカーから、再びパイロットの少女の声が聞こえてきたのだ。
『あの採掘場、あそこに貴方がアレを隠していると、観測出来たのは運が良かった。
案内してもらいます』
少女の声が誰に向けられたものか、それは考えるまでも無かった。
ここにいるのはアルギスと、その父親であるリカルドだけだ。
少女の言葉にリカルドは舌打ちし顔をしかめた。
「っち、事故の衝撃で一瞬反応しちまったか……すまねえなあお嬢ちゃん、アレをメディウスに渡すわけにはいかんのよ」
『……そう』
父とAFのパイロットの少女との会話の内容に、完全に蚊帳の外といった風に呆然としていたアルギスだったが、そんな彼を胸を締め付ける圧迫感と浮遊感が現実に引き戻した。
「な、何しやがる!!」
アルギスを紅いAFがしゃがみ込んで乱雑に掴んだ、アルギスの頭部だけがAFの手から飛び出し、遠めに見ると黒ひげ危機一髪の様に見える。
『まさか貴方にお子さんがいるとはね、さあこの子を握り殺されたく無かったらアレのある場所まで案内して』
「うわ、せこいな」
『うるさい、私だってこんな事したくないわよ』
ポツリと呟いたアルギスに反応するAFのパイロット、元々少し緊張感に欠ける性格の少年は自分が命の危険に晒されている事より、初めて触るAFという超兵器の感触に興味深々だった。
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