崩壊する日常

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「じゃあアル、後でな」 「また負かしてやるよ」 「っは、そうはいかねえよ」 本日の授業を終え、遊びに行く約束を交わし、アルギスは帰路についた。 バスと電車を乗り継ぎ、家から最寄りの駅で降りる。 家までは自転車だ。 駅から家に向かう途中の事だった、どこからともなく何か大きな物が倒れる音が聞こえた。 金属の擦れる音と爆音が混じったようなその音の方を見ると、煙が上がっていた。 「あの辺りって確か――」 野次馬根性に火のついたアルギスは音のした場所と思われる場所に向かった。 行き着いた先には既に人垣が出来ていた、どうやらアルギスの予想が当たったようだ。 「何かあったんですか?」 「CF同士の事故だとよ、ぶつかって倒れたみたいだ」 人垣の一番外にいた初老の男性がアルギスの質問に応えた。 事故の現場は人垣で見えないが、ここが何かはアルギスは知っている。 ネストは鉱山都市だ、鉱山と言ってもクレーター状の窪地に横穴を開けていく物だが。 ここはその工事現場だ。 火星で取れる希少な鉱石、アストラル鉱石の採掘を行っている。 野次馬根性に身を任せ、現場まで来たものの、他の野次馬で現場が見えなかった事と、友達との約束があった事から、アルギスは早々にその場を立ち去った。 実はアルギスの父親がここで働いているのだが、今日は夜勤だと言っていたのを聞いていた。 知らせておかなければ、という気持ちもあったようだ。 自転車を漕げば家までは直ぐに着く。 アルギスは自宅に着くとガレージの横に自転車を置き、玄関に向かった。 玄関のドアを開けるためは指紋認証のパネルに触れなければいけないのだが、今日はそのパネルに触れる前にドアが開いた。 中から父親が現れたのだ。 「あっ、父さん、さっき現場で――」 「ああ知ってる、それの処理に行かなきゃならなくなっちまったんだ、ったく夜勤だっつうのに」 なるほどよく見れば確かに父親は私服ではあるが、肩から腰に鞄を下げている。 「気を付けてね」 「ああ、行ってくるわぁ」
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