time:1 その少女、風使い

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「「バイバ~イ♪」」 綺一と芹歌が声を合わせ、手の平をひらひらさせて一瞬ピカッと何かが光り、次の瞬間紅亜の視界が真っ暗になった。紅亜のいた地面にぽっかりと穴が空き、下へと落ちていったのだ。 「あのバカ双子共め…覚えてろよ」 本日二度目の落下を味わった紅亜は、落ちた穴の1番奥底から地上を見上げてそう呟いた。一方地上では綺一と芹歌がハイタッチをして成功を喜んでいた。しかしその喜びも一瞬だった…二人が作った落とし穴に少しずつ風が集まってそれは段々大きくなり、まるで小さな竜巻のようなものが発生した。それを見た瞬間に二人の血の気が引いていくのが手に取るように感じた。 「我を纏いて舞い上がれ…“風の妖精(ウィンディーネ)”!」 そう唱えると紅亜の周りに風が集まった。そして風はまるで意思を持っているかのように紅亜の足元に集まり、エレベーターのように紅亜を地上へと運んだ。落とし穴の底とは真逆の明るい地上に出た紅亜の目は日の光のせいなのか、目の色が先程の深い青と違って紅く見える。そしてその目は、双子に真っすぐ向いていた。 「そっその紅い目…やっぱりお前…」 「綺一やり過ぎたかな…ちょっとヤバイよ?」 焦りを見せる綺一と芹歌。恐怖からなのか、二人は固まってしまったかのように動けないでいた。そんな二人から視線を紅亜は反らすことはなく、その紅き瞳の眼力と眉間のシワがどんどん増していく。 「お~ま~え~ら~…そんな遊びに力を使うなと何度も言っただろ!!」 紅亜がそう怒鳴りながら手を二人に向けると、二人に向かって突風が起こって二人を突き飛ばした。 お分かりの方もいるかもしれないが、彼女たちこそヴァンパイア一族、『ノアーズファミリー』に対抗できる唯一の者たち……そう、『特殊能力者』なのだ。
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