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紅亜が放った風により吹き飛ばされた綺一と芹歌は地面に軽く叩きつけられ、砂ぼこりを立てて止まった。
「いっててて…ったく自分だって力を使ってるじゃないか」
「ほんと、同感だね」
口々に文句を言う双子。吹き飛ばされたからか、互いに腰や肩を押さえている。そんな彼らに当たっていた暖かい日の光が一瞬にしてなくなり、暗い影が二人を包んだ。他でもない紅亜の影だった。
「反省するわけでもなくお前らは!」
そう言う紅亜の右手には、風が集まっていた。それを見た二人は手で頭を守りながらすかさず言い返した。
「そっそんな事したら支部長に言いつけてやる!」
「そうだぞ!しっ知らないからな!」
「うっ……」
そう言われた紅亜はピタリと動きを止め、明らかに動揺している様子だ。これはチャンスだと言わんばかりに綺一と芹歌はサッと立ち上がり、腰に手を当てて堂々とした。
「そう言えばこの前の事も言っちゃおっかな~♪」
「言っちゃえよ芹歌。面白そうじゃん」
「だよな!だよな!」
そう楽しそうに会話をする綺一と芹歌。そんな彼らを見ている紅亜の髪が風に靡くと、何かが切れるような音がした。
――――ブチッ
「えっ?何か今音が…」
綺一が音に気がつき紅亜に視線を向けた瞬間、綺一の顔が再度凍りついた。綺一の表情が変わったことに気がついた芹歌は、その視線の先を見た。そこにあったのは、鬼にも敵わぬ形相をした紅亜とその心に比例し、炎のように更に紅くなった紅亜の鋭い目だった。
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