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「はい?」
僕も顔を上げて、僕らはまじまじとお互いの顔を眺めあう。
くしゃくしゃの茶髪に一重瞼。
どこにでもいそうな若い男だが、その瞳はどこかぼんやりと深い色をしていて、ここではないどこか遠くを見ているようだった。
「君は、昨日の」
「ああ、もしかして、公園で?」
「そうそう」
男は目尻を下げて大きく頷いた。
「よかったよ、あれ」
「それはありがとう」
僕は小さく頭を下げてビニール袋を受け取った。手の中でくしゃりと音が鳴る。
明らかに年下であろう僕がため口で答えたことにも全く構わずに、彼はレシートを出しながら、いい感じでにこにこした。
「今日もやる?」
「いや、今日はもう次のところに移動する」
「そうか、残念」
本当に残念そうに言う男からお釣りの十円玉をもらうと、僕は店を出た。
ありがとうございましたあ、という店員の声には、今度は心がこもっているように感じた。
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