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帰りの100メートルの間に、僕は昨日の夜を思い返してみる。
夜の公園は街灯に照らされて意外と明るい。
その明かりの下、僕はハーモニカを吹く。彼はバイオリンを弾く。
妙な組み合わせだけれど、演奏はなかなか悪くないと思う。
その証拠に、やがて人が集まる。
犬の散歩やジョギングをしている人、仕事帰りのサラリーマンや遊んできただろう若者たち、様々な人が音に惹かれてふらふらと公園に集まってくる。
演奏を一通り終えて一礼すれば、彼らはそれなりの拍手とささやかなおひねりを飛ばしてくれる。
それをかき集めて、僕は旅を続けている。
青白い街灯のスポットライト。
静かな町にそっと鳴らす音色。
息を潜めてそれを聴く少しの人。
そうやって、僕らは旅を続けている。
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