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公園に戻ると、彼はもう起きて、ベンチに腰掛けていた。
「朝飯?」
「そうだよ」
ビニール袋を手渡して、挨拶。
「おはよう、キリンさん」
「はいはい、おはようさん」
キリンさんはさっさと菓子パンの包みを裂きながら、面倒臭そうに答えてくれた。
キリンさんは、僕の旅仲間だ。
身長は、165センチくらいの僕よりも20センチは高いだろう。でも体重は同じくらいかもしれない。
すごく細い。
最低限の筋肉と、最低限を下回る脂肪しか身につけていないのだ。
伸びた髪を適当にくくって、背中に細く垂らしている。長い前髪は分けもせずに素直に前にあるからもうほとんど目を覆ってしまっている。
見ているだけで鬱陶しいが、本人は気にならないみたいだ。
旅に出てから2週間で僕は彼と出会い、それ以来、何故だか一緒に歩いてきた。
バイオリンケースを肩にかけた彼はあの時、僕に何か楽器を練習しろと言った。
僕はなけなしの金をはたいてハーモニカを手に入れた。
そして僕らは今、この旅2度目の春を間近にしている。
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