‥01‥冬のおわりと三重奏

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黙々とパンをかじり、ミルクコーヒーをすする。口の中がもやもやと甘い。 メロンパンの屑がはらはらと落ちて僕の黒いコートに模様を作る。 ちなみに僕の服装は濃い灰色のTシャツにジーンズ、黒いダッフルコート。 キリンさんはくすんだ小豆色のシャツに黒いパーカー、そしてカーゴパンツ。 コートは着ない。一年中、暑い日も寒い日も、この格好だった。 時計は7時3分。 鳥がピーチクパーチク言っているのが、煩わしくも心地よい。 「今日は?どうすんの」 パンもコーヒーも消費してしまったキリンさんが、ばさり、新聞を広げながら沈黙を破った。 僕はかばんから緑の表紙のノートを取り出して、ぱらぱらめくる。 「お金は一応まだ足りてるから、今日はすぐに移動かな」 「ふーん」 キリンさんは、自分が聞いたくせに興味なさそうに生返事をする。 いつも通りの朝。
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