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ぎい、ばたん、と木製の古めかしいドアを閉じると、そこに背を預けて、手にした四角い緑色を目の高さに上げる。
それは、立派なノート。
祖父ちゃんが好んで使っていたものだけれど、新しいものを買って間もなく彼は逝ってしまった。
主人を失くしたノートは、二年間ずっと、黙って机にうずくまっていたのだ。
僕はその緑色をかばんに突っ込んで、閉じ込めるようにファスナーを閉めた。
じゃっ、と、小気味いい音がしたから、僕の旅はいい旅になるに違いないな、と非科学的に考えながら、僕は明日にはさよならする自室で明日にはさよならする布団に潜り込んで、目を閉じた。
瞼の裏には綺麗な緑色が張り付いたままで、その晩僕は、深い森の夢を見た。
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