‥01‥冬のおわりと三重奏

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寒い朝だった。僕は公園のベンチで目を覚ました。 空はその色を明るくしつつある。 公衆トイレの脇ににょっきりと立っている時計は、長針と短針を重ねるようにして6時32分を指していた。 くるまっていたボロ布を体からはがして丁寧にたたみ、ゆっくりと立ち上がって伸びをする。 冷えて固まった筋肉が軋む。 隣のベンチを見ると、やはりボロ布をぐるぐる巻いた男が一人。 長い体はベンチから大々的にはみ出していた。 微かな寝息を立てて、まだ起きる様子はない。 僕は公園の端にある水のみ場まで歩いていって凍りそうな水で顔を洗うと、ポケットに財布が入っていることを確認して公園を出た。
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