‥01‥冬のおわりと三重奏

3/13
前へ
/42ページ
次へ
朝の町は静かだ。 硬質な白い光がアスファルトの黒に注ぐ。 100メートルも歩けばコンビニがある。昨日確認しておいた。 自動ドアがウィーンと開いて、わっと暖かい空気に包まれる。血液が体中を巡りだすのを感じる。 爪先に熱がじんじんと響く。 いらっしゃいませえ、とやる気なさそうな声を聞きながら、店内に入った。 棚の間をふらふら歩いて、菓子パンと紙パックのミルクコーヒーを二つずつ持ってレジへ向かう。 ああそうだ、新聞も買っておこうか。 相変わらずやる気なさそうに僕が置いた商品のバーコードにレジをあてていた店員は、値段を告げようとふと顔を上げて、 「あ」 と言った。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加