姉という存在

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目が、覚めた。 真っ先に目に飛び込んだ景色は 、いつもと変わらない天井。 ザァーっと外から聞こえてくる音、雨だ。 雪がいつの間にやら雨へと変わっている。 時計は午後8時32分を指していた。 姉は・・・帰ってなかった。 心に得体の知れない不安が突如現れ、私の心を包み込む。 暗い部屋、冷たい空気、何もかもが私の不安を駆り立てていた。 どうしたのだろう。 姉は、まだ帰って来ない。 「おねえちゃん・・・?」 やはり、返事は無い。 [すぐに帰る] 姉はウソをつかない。 決して約束は守る人だ。 帰りが遅いということは 何かあったと云う事だ。 じゃあ姉は・・・・。 私はおもむろに玄関へ向かった。 靴を履き、制服を着たまま、外を飛び出す。 強い雨が全身を濡らしたが、気にも留めなかった。 塀に立てかけた自転車のハンドルを握り、私はおぼつかない足取りでペダルを漕ぎ出した。 姉が買い物に行くルートは知っている、以前一緒にいった事があるからだ。 その道を順に辿っていけば、すれ違うかもしれない。 自転車のライトは雨を照らし出し、アスファルトをぼうっと浮かびあがらせる。 ペダルを漕ぐ足は下校の時よりも速く、焦っていた。 姉は何処にいる? 暗い景色はまるで全てを飲み込むかのような、そんな景色だった。
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