姉という存在

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近頃じゃ全然体験したことの無いほど、とてつもない量の雨が降っていた。 目をまともに開けられかったので、自転車のライトだけが視覚の頼りだった。 それでも何かの衝動が足を動かす。 いつも居る姉がいない、恐怖。 初めて体験する恐怖、日常の一部分がぽっかりと穴が開いたような、妙な感覚。 姉がいないと、私は・・・。 制服が雨水を吸い、ずっしりと体を地に引っ張る。 外気温が低いため、雨に濡れた肌は感覚がなくなってきた。 徐々に落ちていくスピード 呼吸は次第に早まり、足の筋肉は引きつってきた。 白い息を吐き出しながら必死に漕ぎ続けて、見えない視界をぐっと見渡しても、姉はいない。 自転車に乗り始めて10分経った頃の事。 雨で視界は余り見えなかったが、遠くに赤いランプがいくつも見えた。 その赤いランプは道路の脇に止まっているようだった。 自転車で近づくにつれはっきりとわかってきた。 救急車・・・パトカー・・・。 背筋がゾッとした。 恐る恐るその場所へと自転車を漕いでいく。 数人の警察官と2台のパトカー、一台の救急車が止っていた。 そして大破した車が一台。
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