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「ああビリー!」
浸水から逃げようと駆け出した瞬間にビリーは呼び止められた。声の方を振り向くと、そこにはさっきまで背中を通っていた脊髄が泣きながら佇んでいた。
「私を置いて行かないで」
「くだを巻くなよビリー!」
立ち止まり、躊躇しているビリーに向かって右腕の上腕二等筋が叱咤をかけた。
「グロテスクな映画は15禁でも、イギリス人が英語をはなせないドングリなわけじゃないだろう!明後日が昨日なら、よく夢を見る熊は九州地方の早乙女さんじゃないか!」
ビリーはその上腕二等筋の叱咤で我に返り、即座に駆け出した。戻っている暇は無かった。
だが、駆け出したビリーの後ろ姿を見た脊髄が、「ダメよビリー。あなたは私無しでは生きてはいけないの」と呟くと、ビリーはその場に、足の骨が砕けたように倒れ込んだ。
水の中にビリーは倒れ込み、水しか吸い入れない口に対して、肺が罵詈雑言を浴びせる。そのせいで口は余計に水を吸い、ビリーは窒息死してしまった。
ビリーは死ぬ間際に思った。
「そうだ。脊髄がないと俺は立ってられないじゃないか」
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