プロット

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執筆を依頼していた編集者は、作家の自宅に来ていた。締め切りを過ぎても原稿が上がらず、連絡をしても音沙汰が無かったので、様子を見る為だ。 玄関のチャイムを鳴らし、扉を数回叩いてやっと作家が現れた。目の下に隈が出来て、幾分か痩せていた。 「どうしたんですか一体!紙面が飛んじゃいましたよ!」 「実は…」 お構いなしに激昂する編集者に、ポソリと作家が語り出した。その話は、俄かには信じられない話だった。アイデアが浮かばず焦っていた作家の元に、プロットの神様が現れたというのだ。言い訳にしては馬鹿馬鹿しいが、作家の血走った目は、全力で真実だと告げている様だった。とにかくその神様は、作家に最高のプロットを授けたという話だった。 「プロットは貰ったんですよね?つまらなかったんですか?」 「そんな事は無い。確実に文壇に名を残せるプロットだった」 瞬きもせず、作家は頭を振る。 「じゃあ、何が問題なんです?」 顔をしかめながら編集者は尋ねた。 「聞いてみる?後悔しないでくれよ…」 そう言って、作家は神様から聞いたプロットを語り出した。 「ギャアアアア!」 断末魔の悲鳴と共に、心臓を押さえた編集者は、前のめりに倒れて動かなくなった。 「やっぱり…。僕も危うく死にかけたんだ。こんな話、使える訳が無い。思い出したくも無い。ホラー作家になんてなるんじゃなかった…」
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