曽根崎という男

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北海道の空港に降り立った二人は、空港の外に出て驚いていた。 「春先っていうのに雪ってものはしぶとい物なのですね」 「山の上なんか真っ白だな。スキーもまだまだ出来そうだ」 なんて、呑気に瞳を輝かせて言う京都とは違い、夏樹は肌寒さを感じずにはいられない。 なんせスーツなのだから厚着も何もないのだ。ましてやスカートとである。夏樹は昔からスカートよりもジーンズなどの動き安い服装を好んでいたので、スカートの通気性には理解できないのだ。 中学、高校と仕方なく制服を着ていたが、私服でスカートを履いたことなど一度もないのだ。 夏樹は出発前の自分を殴りつけてやりたかった。 何が重大な用件だ。 考えてみれば自分には関係ないのだ。 「雇い主のところに行くまで時間があるし、服でも買いにいくかい?」 と、京都が提案してくれたのだが、夏樹も出発前にあれだけ騒いだことから、素直に頷くことは出来ない。 全くもって損な性格である。 「しょうがないなぁ」 と、突然京都は夏樹を突き飛ばし、脇に固めてある雪にダイブする羽目になった。もちろん、雪掻きされた後だし、人が歩いたりしていたから雪のなかにも泥が混じってひどく汚れていた。 「何をするんですか!?」 「じゃあ服を買いにいこう。その姿だと泥だらけでみっともないだろう?」 「……わかりましたよ」
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