曽根崎という男

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「げっ……」 ゴールデンウイークに入る前、およそ三日ほど前の朝に夏樹キッチンで叔父と対面してしまい、思わずそんな声が漏れてしまった。 京都はジーンズにセーター。そのうえにエプロンといった格好をしており、何やら料理に勤しんでいた。 京都は基本、綺麗好きなのか。身嗜みに関しては驚くほど豆だ。髭なんかもこまめに剃っているみたいで小綺麗にしている。 京都を知っている女性は、おじ様と呼ぶくらい。 なんというか、ナイスミドルとでも呼ぼうか。 飄々としていて、わりと背が高い。 有名人で言えば誰だろうか? 夏樹は有名人で例えれば分かりやすいと思ったが、実はテレビなんかを好んで観ない。 というより娯楽全般には疎いのだ。 「うん? 夏樹ちゃんも朝食? なんだったら一緒に食べるかい?」 夏樹に気づいたのか笑顔で食器を用意している京都。 「……いただきます」 わざわざ自分で作る手間やらを考えて、いただくことにした。 夏樹は料理もそこまで得意じゃないから願ったり叶ったりだ。 京都は手際よく準備をすませ、食器を並べる。当然、向かい合って食べる事になった。 「今日も学校?」 「そういう叔父さんは今日も暇なんですか?」 ここ一ヶ月。京都は仕事をしている様子はなかった。探偵と言っても、忙しいわけでもなく。基本暇らしい。 それに、仕事が入ったとしても浮気調査や、ペットを捜す程度。 それを知っているので、憎まれ口のつもりで言ったのだが、返ってきた言葉は予想外なものだった。 「今日は暇だけど、次の大型連休は仕事が入ってね。北海道に向かう事になった。どうだ? 夏樹ちゃんも助手ってことで行かないか?」 「は?」 驚く夏樹の顔を見てニヤニヤしている京都。どうやら驚く夏樹を見て楽しんでいるようだ。
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