曽根崎という男

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「いい返事だ。それじゃあ出発は明日だから準備もあるだろう。お金は工面するから買い物でもしておきなさい」 と、言って渡されたのはクレジットカード。しかも使用限度無しの。 しかし、今更驚かない夏樹である。 それよりも気になるのが先ほどの叔父の言動である。 「それより叔父さんはなんで私の予定が空くと予想ついてたのですか?」 「叔父さんか。叔父様っていう呼び方だと最高なんだがな。何と言うか、憧れる」 「話を反らさないで下さい」 「俺みたいな世代にはそういった呼び方がストライクってなだけだよ。機嫌とりには最適だから覚えておいて損はないさ。ま、話をって反らしたと言われれば否定はできないが」 気取った口調の京都。叔父のような年代の人はこういった喋り方をするのだろうか?、と夏樹は疑問に思う。 「理由は探偵の勘って言ったらどうする?」 「探偵の勘、ですか」 「別に元、刑事の勘でもいいさ」 元、にアクセントを付けている辺り、もう刑事として見られたくないのだろうか。 「恐れ多くも警察で働いてきたんだ。それくらいの勘が働いてもおかしくは無いだろ?」 そう言われれば頷くしかない夏樹である。 「ま、ゆっくり買い物をしてくればいい。片付けなら俺がやっとく」 その後、夏樹がテレビでインフルエンザのニュースを特集でやってるのを見た時、無性に腹が立ったのは言うまでもないことだ。
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