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鳥が鳴き花が咲き乱れる春の農村で一人の少年…太助が今旅立とうとしていた。
「これが最後の別れになる訳じゃないんだから…泣かないでよ、母さん。必ず帰るから」
農家の長男として産まれた太助は早くに父親を亡くし母と二人暮らしをしていた。
今までの生活に不満は無いが…戦乱の度召集され、農作物を育てる暇すら与えられぬ日々を過ごしていた。
そして元服を迎えた彼は遂に城より大きな戦に備え長期に渡る召集を受けてしまった。
「今度は西国だろう?あちらは激しい戦乱が行われてるそうじゃないか…お前が死ぬ事が何より怖いよ…」
「母さん…今度の戦が終われば褒章が沢山出る。必ず…必ず母さんを楽にするから」
太助は母親と抱擁を交わすと名残惜しさを残しながらも旅立っていった。その背中に息子の無事を祈る母は姿が見えなくなってもいつまでも手を振り続けていた。
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