想いは桜色

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  「剣道で俺が負ける訳ないだろ、レギュラーにもなれない奴が、大口叩くな」  俺は『恋愛』という言葉を切り捨てて、黒焦げた胸の内をそのまま逢斗にぶつける。そして武道場に入ろうとした、が。 「僕が本気を出せば、誰にでも勝てるさ。ただ痛いのは嫌いだから、本気にならないだけで」 「逢斗……剣道を舐めるのも、いい加減にしろよ」  それは俺が全身全霊を掛けてる、剣道への侮辱だ。剣道は普段適当な奴が、たまに本気を出して勝てるような甘い武道じゃない。 「これは部長のスタンスだろう? 僕はそれを鏡に映しただけさ」 「俺が適当に練習してるって言いたいのか!?」  逢斗を無視して扉を引き、中へ入れば円満に済む。けれど今日は、それが出来ない。気が付けば俺の拳は、扉ではなく逢斗の胸ぐらを掴んでいた。 「だから部長のおせっかいな親友は、何かと世話を焼いていたんじゃないのかい? もっと積極的になれと」  
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