想いは桜色

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  「っ!」  逢斗が言いたいのは、剣道の事じゃない。俺は返す言葉も見つからなくて、負け犬の手を離した。 「……部長、これを図書室まで返してきてくれないかい?」  すると逢斗は、一冊の本を差し出す。 「そんな乱れた気持ちで部活に出られても、皆が戸惑うばかりさ。一度頭を冷やした方がいい」  誰のせいでここまで気持ちが乱れたと思ってる。そう言いたいけど、俺に言い返す資格はなかった。確かに今の俺は、練習に打ち込む皆の空気を壊すだろうから。 「分かった……」  俺は本を受け取り、とぼとぼと図書室まで向かった。 「――やれやれ、何だかんだで応援してあげる僕って、優しすぎてビューティフルだよね」  逢斗がどんな気持ちでこれを託したのか、そんな事も分からずに。  図書室のドアを開いて、俺は思わず足を止める。机の一角に積み上げられた本の山、そしてそこに、飛鳥ちゃんが寝ていたんだ。  
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