想いは桜色

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   何がきっかけで、俺は彼女が好きになったんだろう。卒業して一年経った高校の校門前で、買ってきた花束を眺めながら考えた。  俺は剣道が好きだ。だから、彼女が剣道に興味を持ってくれたのが嬉しかった。  多分……きっかけは、そんな小さな感情だったと思う。けれどそれは、彼女と――飛鳥ちゃんと交わすちょっとした会話が積み重なって、いつの間にか大きくなっていたんだ。  いつも通りの練習を終え、俺は竹刀を肩に掛けて武道場から出て来る。  飛鳥ちゃんはいつもこの時間、俺の元へ駆け寄ってくるんだ。 「先輩!お疲れ様です♪…あ…あの…よ…よかったら食べて下さい!!」  彼女は岩瀬 飛鳥、ポニーテールの似合う、笑顔が可愛い高校二年生の女の子だ。  けれど今日はうつむいて、顔がよく見えない。そんな飛鳥ちゃんが俺に差し出したのは、綺麗にラッピングされたクッキーと、メッセージカードだった。  
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