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ドサリ、と落ちた大学の資料の音で、俺は我に帰る。気が付けば、飛鳥ちゃんと逢斗が、驚いた表情で俺を見ていた。
「ごめん……二人がそうだなんて知らなくて、あ、邪魔はしないから、本当にごめん!」
この場にいたくない。理屈より先に叫んだ何かが、二人から逃げるよう足を勝手に動かす。
(まさか本当に二人が付き合ってたなんて! 俺は何してたんだよ、馬鹿!)
どうすればいいんだろう。飛鳥ちゃんの優しさを勘違いして好きになりましたって、そう告白するのか?
出来る訳がない、そんな事。
気が付けば俺は、毎日通っていたせいか、無意識の内に武道場まで来ていた。
――これから、どんな顔をすればいい? 誰にも会いたくなかったから、俺はとりあえず武道場の裏へ隠れた。
「先輩…どこ行ったんだろ…」
すると俺が隠れるのとほぼ同時に、飛鳥ちゃんが現れる。
俺を探しに来たのかな。今顔を合わせたら、何を告げられるんだろう?
「もう喋れない、よなぁ……」
俺は小さく呟くと、冷たい武道場の壁に身を寄せた。
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