脱却

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20XX年、日本・東京。 「以上がミュータントが生まれた歴史です。」 スクリーンに映っていた絵が消えた、どうやら授業は終わったらしい。 俺はゆっくり伸びをして、正面を向いた。 「次回の授業からは、ミュータントが現れたことによって世界がどう変容したのか、についてやりたいと思ってます。みんな予復習しっかりね。」 黒板の前で眼鏡をかけた女がそう言ってスクリーンを元に戻し教室から出て行った。女って言い方は失礼か。一応先生なのだから。 今やっていた授業はミュータント学だ。 勉強自体は比較的に好きだ、だけどミュータント学は大嫌いだ。 なんでかって? 大体わかるだろ? 俺がミュータントだから。 教科書によるとミュータントは、第二次世界大戦前にアメリカで現れ始めたらしい。 密かにミュータント軍を組織したアメリカは、それまで劣勢だったにも関わらず枢軸国のナチスドイツ、イタリア、そしてここ日本を次々に破り見事に勝利した。 ミュータントによって勝ったにも関わらず、戦いが終わるとアメリカはミュータントを弾圧し始めた。 理由は簡単だ、普通の人間が彼らの特別な能力を恐れたからだ。 ところどころである実験が始まると至る所でミュータントが発見された。同時に弾圧も起きた。 そして、今に至る。 つまり、ミュータント学はミュータントがいかに人間にとって脅威的な存在で危険因子なのか。 ただそれだけを刷り込むための学問だ。
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