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クラノスには事の経緯をすべて話した。
皇女奪還をしたこと。
拉致した一族のこと。
そしてルカのこと。
白い髪に赤い瞳をした彼女の話をしたが、クラノスは動じなかった。
それどころか、少し苛立ったようにため息をついただけ。
クラノスはルカのことを全て知っていたのだと、そこで気付いた。
それから約半年。
クラノスはいつ帰るかわからないルカを探すため、毎日下町に足をむけていく。
だが今日までなんの進歩もなく、過ぎていった。
「シグルドはアイツのあの姿を見ても、まだ好きでいられるのか?」
クラノスの問いに、シグルドは再び眉をしかめる。
「ではクラノスは嫌いになったのですか?」
逆に聞き返されたクラノスは一瞬驚き、その後声を出して笑い始めた。
「確かにな。俺も嫌いになれなかった」
なら…とクラノスは笑うのを止める。
「シグルドに少しアイツの話し、しようか」
急に真面目になったクラノスに、シグルドは息を呑む。
そしてクラノスは静かに語り始めた。
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