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牛乳特有の匂いを嗅覚が思い出しながら、照美と僕はぶちまけられたおいしかった牛乳を雑巾にしみこませる。
照美はしきりに「ごめん、マジでごめん」と誤っているが、僕は農家の皆様や加工や牛乳パックの製造を行ってくれている工場の皆様を代表するのはおこがましいかもしれないけども簡単には許さないぞ。
「牛さん…うう…。」
違った。牛宛てだった。謝罪牛宛てだった。
そんなことはどうでもいい。目下僕の悩みの種は今日の夕食についてであった。
二人分の食事を僕が用意する理由なんてないが、一人分作るなら二人分作ってやってもいい。材料費はせびりとることができるだろうか。
昼は僕だけで湯を沸かしてカップラーメンと洒落こんだが、買い置きなんてところまでおしゃれな事はしていなかった。いや、していたのだが単に底を尽きた。
食材もあまりない。
というか牛乳の匂いが僕から気力を根こそぎ持って行ってしまったので今の僕に創作意欲はない。
一応水拭きしているのが、この匂いは消えるよな?
照美は仕方ないがこの匂いと同居するのはもっと避けたい。
…照美は仕方ないと一瞬でも思ってしまった自分が情けない。
「なー、ゆたかー。」
「手を休めるな。それからまだ自己紹介はしてないはずだ。なぜ僕の名前を」
「おなかすいた。」
どうしよう、賞味期限切れのヤキソバパン用意するの忘れていた。
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