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「……ッ」
「急に起き上がんなよ」
脈打つ頭が耳鳴りを伝えて喧しかった。
カーペットの上に転がっていた身体を起こし、辺りを見渡す。マンション内だろうか。広い部屋であった。
「車ん中で気絶しやがって。本当に黒翼なんだか」
「……黒翼?」
「なんだ。本当に何も知らねぇの?」
呆れたように言われ、神楽は横目で男を睨んだ。
「……いい加減にしろよ」
「お?」
「ここは何処だよ! あんたら何者だよ!」
「……」
「あの男は誰なんだよ……ッ!」
声を荒げたのも束の間、見えない力に首を圧迫され、それ以上、言葉を紡ぐ事を許されなかった。
「誰に口聞いてんだ。……あ? 助けてやったわけじゃねえぞ。いいか、それだけは頭ん中叩ッ込んどけ!」
男は言い終わると同時に、突き飛ばす様に神楽を解放した。
「……あ、あんたら、俺を殺、」
「いつかそうするかもな。何つったって、俺らは白翼で、お前は黒翼なんだし」
「だから、その黒翼が何なのか……ッ」
イカれてる。そう思った。どこかの宗教絡みだろうか? しかし、そんな仕事、請け負った覚えはない。
歯向かう度に、見えない力で押さえられた。男は腰を屈めると、噎せる神楽の胸倉に掴み掛かった。
「ふざけんのもいい加減にしろよ! お前からする魔力はなんだ! 言ってみろ! だいたい──」
神楽同様、興奮し反論する右哉。その彼が、何かに気付くようにして動きを止めた。神楽も例外ではなかった。男の背後に強力な力を感じ、唇を戦慄かせた。あの時、男の隣りに立っていた女であった。
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