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「絶対に許さない」
敵意むき出しの彼女に、どうしていいか分からず神楽は戸惑った。
「ああ、そうだ。誘発すれば記憶戻るかもね」
言いながら、左弥が妖しく笑った。ゾっとするほど美しかったが、どこか不自然であった。しかし、神楽を釘付けにしたのはそんなものではなかった。
聞こえてきたのは羽音。そして視界に現れたそれは、白。部屋一面に広がった、巨大な純白の翼であった。
「私の名はミカエル。四大天上神の一人であり天上長。そして、神の剣」
――ミカエル。
それはあまりにも有名な、天使の名前であった。
「こっちはラファエル。私の弟として生まれ変わった姿」
不服そうに、右哉は壁側を向いた。
「信じた?」
「て、んし……?」
「そう天使。人間が勝手につけた名前だけどね。そして、あんたがいわゆる悪魔。認めたくないかもしれないけど、あんたのその匂いは紛れもなく悪魔のものなわけ」
「……」
「その悪魔を、私達は討伐してんの。分かる?」
それは殺しと解釈していいのだろうか。
「言っとくけど、記憶のある天使や悪魔はもう人間じゃないの。討伐された体は消えるし、行方不明者が増えるだけ」
どうかしてる。こいつら、本当におかしい。
「左弥、この後どうするよ?」
「記憶が戻らないうちは討伐対象外だから。厄介事が増えるだけでしょ」
「じゃ、どっかに放ってもいいか?」
「いんじゃない? これだけ見せれば、いつか記憶も戻るはずだし」
そう言い残し、神楽に背を向けた左弥は、颯爽と部屋を後にした。
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