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煌びやかな装飾で彩られた店内。それでも流れるBGMに派手さは感じられなく、談笑の声も大人の落ち着きがある。
女は席を立った。純白のドレスに身を包み、フワフワとした巻き毛をほんの少し靡かせた。今まで彼女を相手にしていた男は、名残惜しそうにその姿を見送った。
此処、六本木のクラブで働く彼女は本名、炎谷左弥と言った。先程ボーイに呼ばれ、ソファを離れたのだった。彼女を呼んだボーイ、実は双子の弟であった。名を右哉と言う。
姉の口添えで働く右弥は、その容姿を活かしつい最近まではホストであった。しかし、思った以上に難しい職業であった為か、稼げず、上を狙うには些か困難であると知って、最近そのホストクラブを辞めた。
片や双子の姉はナンバーワン。同じ顔とは言い難いが、ここまで差が付けば、少々口惜しい。
「もう、何なの!」
暫くすると、控え席に一人の女が現れた。左弥であった。
「どうかしたんですか、先輩」
「まだ席たくさんあるのにダメですよぅ」
「だって、新規が私を上から下まで舐めるように見て、これがナンバーワン? って顔するの。何話しても、興味ねぇよ。みたいな感じだし!」
「ちょっと何してんすか! 勝手に戻っちゃ駄目でしょ。他の指名さんとこ行って。ヘルプ回すから。でも一応貴女の席だから、ちゃんと回ってよ」
「分かってる!」
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