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幽霊なんかの仕業じゃない。親父は一目で、俺が動かしていると気付いた。少しばかりの年月が経ち、俺の力は増していった。死を予測できるようにもなった。それに直結している人を見掛けると、迷わず口にしていた。明日死ぬよ。とか、水に気を付けて……とか。
自分なりに心配していたはずなのに、気味悪がられるだけで周囲から孤立していった。世間と言う白い目が噂を立てるのはあっという間で、引っ越しをする羽目になった俺ら家族だったが、親父は前向きだった。
新しい土地でやり直そう。同じ目に合っても、時が経てば人は変わるものだと。
今思えばお袋だって相当参っていたのに、黙って親父についていってた。
何故幼い俺は二人の心境を理解できたのか。未だに分からないが、それから俺は力を封印する事にした。でも分かっていたんだ。周りに合わせると言う事がどれだけ大事だって事が。
大学卒業後、俺は親父の仕事を手伝う事で再び力を使う事になる。もう分かっていたから。使い道を。十数年経っても健在だった事には驚きを隠せなかったが。
「お前、何でそんなに力が弱い? すっげえ魔力は感じるのに」
「知るかよ。……でも、十六、七年使わなかったからかもな」
「だからか」
「?」
「記憶が戻ってないのは」
では、このまま使い続けていればいずれ完全なる悪魔となってしまうのだろうか。
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