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「嫌だ」
「何?」
「だったらもう使わない。記憶が戻らなきゃ、俺は人間のままなんだろ」
再び大きく溜め息を吐く男は、呆れていると言うよりも、それを通り越して楽しそうであった。やれやれと、言っているのだ。
「お前、バカがつくほど強情だな」
「バカで結構」
「だが無理だぜ」
「なんでだよ」
「見張られてんだ白翼に。此所は大丈夫だけどな」
「でもあの女は、俺が記憶をとり戻すまで手は出さないって」
「女? ああ、左弥か。いくら炎谷が天上長であっても、他に天神はたくさんいるんだ。前回のように、上手く命令を聞く奴はそういないぜ」
「たくさんって……」
「現に襲われてただろうが。別行動してる白翼に」
「あ……」
「アイツらは構わず俺等を根絶やしにしたいだけなんだよ」
違和感は違和感のままではなかった。何処かおかしいと思ったのは、天使が凶悪過ぎる事であった。
「これからは俺と行動を共にしろ。いずれ他の地下人を紹介してやるよ」
「……」
「不満か?」
「いや」
「強情だが飲み込みは早えみたいだな」
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