Twin angel

6/16
前へ
/114ページ
次へ
「あまり危険な事はしないでちょうだいね」  困った様に笑うエミに、政長は、同じ様に困った笑顔で返した。  渋々了承した息子の頼み。あの子の依頼に、危険が多い事くらい承知の上だ。だが、神楽が望んだ生活は、容易く撤回できるものではない。彼は、普通ではないのだ。 「ほら、今日は寒かったでしょう? 早くお風呂入って」  半ば無理矢理話題を変えるように、夫を風呂へ追いやる。自分が振っておいて、何て身勝手な。  エミは神楽の力を疎ましく思っていた。最初は受け入れられずに戸惑った。しかし、その息子の力も、今は夫と共に愛せるようになった。  生まれながらにして備わった不思議な力を、彼は……雅長は、神からの贈り物だと前向きに捉え、受け入れた。天真爛漫な夫が嬉しそうに口にした、その一言。今でも鮮明に思い出す事ができる。彼が夫でなければ、神楽は存在しなかった。あの親思いの優しい子がどうなっていたか、想像すら恐ろしい。  愛する家族。かけがえのない二人。この幸せが続けばいいと、ずっと祈っている。  その幸せが、何故だか最近不安に変わって来ている。理由は分からない。主婦の勘とでも言うのか。二人は気付いているだろうか。彼等は強い。だから、感付いているかもしれない。  毎日毎日、無事に帰って来るだろうかと、そう思ってばかり。  息子は帰って来るだろうか。  無事な姿を見るまでは、この不安は拭いきれないのだ。 †
/114ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加